【第2話】トマトの理由
俺は推しを守るために命を捧げ、次に目覚めたときにはトマトになっていた。混乱が俺を襲った。目も口も耳もないのに、自分がトマトであることを理解できる。なぜトマトなのだろうか。輪廻転生で俺はトマトに生まれ変わってしまったか?今の状況から考えるにそうとしか言いようがないか。てっきり死んだ後は神とやらとやりとりがあってそれで決まるものだと思ってたけど…。でも、前世の記憶があるのも不思議だ。これは何らかの罰で前世の罪を懺悔しろということなのか?
私が説明しましょう。
突如として、誰かの声が頭の中に響いた。しかし、それは普通の声ではなかった。耳で聞くのではなく、直接思考として伝わってきたのだ。
これは思念伝達といってあなたが生まれ持つスキルです。音声を発することができないあなたはこうして他者と会話をするのです。ただ念じるだけでいいのです。そして、あなたが自分がトマトだと知覚できるスキルは魔力感知です。魔力は血液のように体に流れているのでその形を知覚できているのです。
なるほど。ところであなたはどなたでしょうか?
私はこの世界の管理者をやっております女神です。
女神?なぜそんな偉い方がこのトマトなんかに用があるんでしょうか?
実はあなたにはお願いがありまして、この世界を救って欲しいのです。
世界を救う?トマトですけど?そもそもこの世界は平和ではないのですか?
ええ、トマトさんに是非お願いしたいのです。
トマト…慣れない響きだな。ところでなぜ僕はトマトなんですか。
はい、疑問点も多いと思いますので順を追って説明いたしますね。
俺はそこで女神からこの世界の状況を知った。この世界は魔王に支配されていて女神を信仰する教徒たちが信仰を禁止されている。女神は教徒たちの信仰をエネルギーとしているため、今はほとんど力がないらしい。俺にその魔王を倒し、教徒たちを解放してほしいとのことだった。見返りとしてなんでもいうことを聞いてくれるらしい。
女神様、話を聞いている限りこの世界は俺がいた世界ではないということですか?
言ってませんでしたね。あなたは元いた世界とは違う世界に転生したのです。
元いた世界とは違う世界…。つまりそれって「異世界転生」ってやつか!異世界行ってみたかったんだよなー!でも、現状を考えると悲惨だ。普通、勇者とか人間で転生するだろ。せめてスライムとか魔物が良かったよ。トマトでどうやって魔王を倒すんだ、まったく。
加えて俺がトマトになったのは…
はい、私があなたをこの世界に転生させたときにあなたの最も愛する人があなたに望んだことだからです。
そういえば、死に際に黒田が
「あんたなんてトマトになったらいんだ。私を守って死ぬなんて馬鹿みたい!」
って言ってたような…。でも、確かに言われたけど、女神様それはツンデレってやつで本心じゃないですよ!
ツンデレ?なんですかそれは。私には人間の価値観や文化は理解できません。
こ、この女神ポンコツなのでは…。
ところでトマトさん。願い事ですが何をお望みでしょうか。
俺は元の世界に戻りたいです。元の世界に戻って黒田が無事か早く確認したいです。
わかりました。ただ非常に申し上げにくいのですが…
何ですか、すごいむずむずします。言ってください。
黒田さんですが、実はお亡くなりになりました。
え…。
トマトでありながら目から光がきえ、ぷつんと糸が切れた操り人形のように膝から崩れ落ちるように錯覚した。
あのー大丈夫ですか?
いえ、全然大丈夫ではないです。今すぐ彼女の後を追いたい気分です。しばらくほっといてほしいです。
そうですよね。でも、トマトさん私はあなたの願い事を叶えることができます。例えば、あなたが亡くなったあの日の朝に時間を戻してあなたがもう一度黒田さんを守れるチャンスを与えることができますよ。
え。
じゃあ、黒田が死ななかったことにはできますか?
はい、できますがあなたは二度と黒田さんと同じ世界には帰れません。神法により、神は人間にあまり関与してはいけないことになっているのです。昔、人間に恋をした神がいましたがその神は人間に依存し、何でも願いを叶えてしまいました。その結果、その人間のいいように世界は構成され、最終的に滅びたのです。これにより、神法が定められ、その中の人間救済の項目にて願いは一つのみ叶えることが許されているのです。
黒田さんを救い、あなたも現世に戻るという願いを叶えるとなるならば、私はどちらか一方しか助けられないので黒田さんはあなた自身で救ってあげてください。当日の朝に時間を戻すのは特別サービスです。あなたにこのままやる気をなくしてもらっては困りますので。
俺が魔王を倒せばいいんですね?
はい、その通りです。
でも、俺はトマトです。この状態でこの世界を支配した魔王に勝てる気がしません。異世界転生ならほら、何かしらチートスキルとか持ってないんですか?
はい、あなたにはユニークスキルが付与されてます。ステータスと唱えてみてください。
「ステータス!」
ぼんっとよくゲームで見るウィンドウが表示された。内容はこうだ。
ただのトマト Lv.1
体力: 1
魔力: 1
知力: 1
スキル: 鑑定, トマトスプラッシュ
ユニークスキル: 強奪者, 女神信託者
鑑定:相手のスキルを見ることができるもの。知力が相手より低いと阻害されやすい。
トマトスプラッシュ:トマトスプラッシュする
強奪者:相手のスキルを奪い自分のものにするスキル。相手を倒すことでスキルを奪うことができる。
女神信託者:女神との連絡が常にできるスキル。女神が暇な時いつでも相談できる
いや、ステータスひっくーい。これで勝てるんですかね。トマトスプラッシュって説明になってないだろ!でもユニークスキルで何やら強力なスキルも持ってるみたいだし、敵のスキル奪っていけばいい感じっぽいな。倒せればの話だけどな!
あのー、ところで女神様。私動けないんですけどどうしたらいいですか?
今画面のロックを解除しましたので動けますよ。画面の左は仮想コントローラーになっているので前に倒して進んでください。
画面の右側は視点操作とスキルボタンが設置されてます。敵を倒すのに使ってください。
チュートリアルかよっ!!
続く。
P.S. お読みいただきありがとうございます。構成を変えるかもなので草案程度に読んでいただけると幸いです。執筆楽しいんですが、頭をめちゃめちゃ使うので頭痛がします。このまま執筆しきれるといいな。(推しの呼び方が定まっていないので後日訂正いたします。)
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