【第4話】トマト3世
俺はオークがいた町から空を飛び、脱出し再び転生した地であるトマト畑に帰還した。
俺はオークを倒したことで四大魔人のシュルムに勘付かれた。シュルムは部下の生命反応を感知できるスキルを持っているようだった。そもそもオークの殺害というのが不味かったかもしれない。敵にバレないように町を開放していく必要があるな。見つからなかったからいいもののさっきみたいに四大魔人と鉢合わせてしまったら次はないだろう。
俺はこの世界に来て1日も経っていない。右も左もわからないので女神様の言う通りに行動していたが、女神も完璧ではない。俺もこの世界や自分のスキルをしっかり理解しないといけないだろう。
女神様、俺勘違いしてました。トマトになったことはこの世界で魔物に対抗するためだったんですね。女神様は何も考えていないのかと思ってました。
失礼ですね。私だって考えているんです。ですが、トマトさんのいう通り考えが足りてない部分があるかもしれません。実は私はすでに魔王に2敗しているのです。
2敗というのはどう言うことですか?
赤城さんでしたっけ?赤城さんはこの世界の転生者3人目なんです。
3人目?俺の前に2人もこの世界に転生者がいたんですね。
はい、全員トマトで人ではありませんでしたので転生者ではなく転生トマトの方が正しいですね。赤城さんの参考になるかわかりませんが、違うトマトの方のお話をしましょう。
初代トマトの方、トマト一世と呼びましょうか。トマト一世は赤城さんと同じこのトマト畑のトマトに転生し、トマトスプラッシュを駆使してどんどん魔物を倒していきました。トマトは魔物にとって猛毒であり、人間は村の周りにトマト畑を作ったり、トマトを食べたりして魔物から身を守っていました。しかし、その中でトマト一世が遭遇した一つの壁がありました。それが現魔王ヴェジタリウスです。
ヴェジタリウスは、他の魔物たちとは違い、トマトの毒に耐性を持っていました。そのため、トマト一世は彼を倒すことができず、結果的に彼の手によって命を落とすこととなりました。しかし、その戦いの中でトマト一世はヴェジタリウスの弱点を見つけ出しました。それは「キュウリの涙」です。「キュウリの涙」はトマト毒無効化を解除するアイテムだったのです。このことに早く気づいていればトマト一世は魔王を倒せたかもしれません。
トマト一世が倒されてからは魔物の侵略が始まりました。魔王城周辺の町の全てのトマトを刈り取り、人間たちへの支配が始まりました。魔王は人間を強制労働させ城を確固とし、魔力を彼らは食糧とするので人間を家畜化しました。それにより、女神教徒たちも囚われてしまい祈りを捧げることができなくなりました。私のパワーは減少していきました。そこで魔王中心の世界を変えるべくトマト2世を転生させました。彼には「キュウリの涙」を持たせ、魔王討伐に出てもらいましたが魔王を守る四大魔人がこの頃には誕生していたのです。トマト2世は四大魔人に敗れてしまいましたが彼らの情報を手に入れてくれました。
シュルム: キノコを象徴する魔人。魔法が得意で毒や幻覚を引き起こすユニークスキルを持つ。
カレブラス: カリフラワーを象徴する魔人。カリフラワーのように頭部が大きく、知力が高い。精神攻撃系のユニークスキルを持つ。
ルタバガ: カブを象徴する魔人。動きは鈍いが体が硬く、防御力が非常に高い。
カボチャード: カボチャを象徴する魔人。大きな体を持ち、強力な物理攻撃を行う。
ヴェジタリウスはトマトを克服するため、あらゆる野菜を魔物と掛け合わせました。トマト畑の隣にはえたカブ、カボチャ、カリフラワーなど毒性をもつ土壌に対応できる野菜を使いました。シュルムだけは野菜ではありませんがキノコ毒がトマト毒を打ち消す作用をもつようです。彼らには「キュウリの涙」は効かないのでそれぞれの弱点を探っていくしかありません。
トマト二世が倒されたあと、魔王軍の支配は全土に渡ってしまいました。そこで今回転生したのが赤城さんというわけです。
とてもやばい状況というのがわかりました。俺が今回で倒さないと次はなさそうですね。
はい、私の力もごく僅かになってしまいました。赤城さんの転生で力を使い果たしてしまったので赤城さんがどうにかしてくれないとこの世界を見捨てる他ありません。
とても投げやりなのがアレですが、俺も黒田を救わないといけないし頑張りますよ。そこで今後の作戦ですが、さっきの町制圧できるんじゃないかと思うんです。
赤城さん、いくらレベルアップしたからってそれは慢心ですよ?
女神様、違うんです。トマトスプラッシュを町から脱出するときに使ってわかったんです。トマトスプラッシュは強弱をつけられるんです。
それはどういうことでしょうか?
つまりですね。オークを殺害することなく、無力化すればシュルムにバレずに町を解放できるんじゃないかと思うんですよ。毒って致死量を摂取しなければ薬になることもあるんです。痺れるくらいの量にトマトスプラッシュを抑えれば、オークを無力化できるはずです!
ナイスアイデアですね!それは先代のトマトもやっていませんでした。
オークを無力化して住人を解放しましょう!
女神様との作戦会議を終え、俺はオークが警備する町へ向かった。
続く。
P.S. お読みいただきありがとうございます!次回は町制圧編を書いていきます。
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